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映像でもお楽しみいただけます。
特別対談
第4回わっしょい米子祭りスペシャルゲスト松本茜さん
横田誓哉:第4回わっしょい米子祭りを目前に控えて、今回は対談です。第4回わっしょい米子祭りのゲスト、松本茜さんに来ていただいております。ありがとうございます。
松本茜:ありがとうございます。
横田誓哉:今回は待望の松本茜さんの出演ということで、すごく楽しみにしていました。オファーから今まで結構時間が経ちましたが、大丈夫でした?オファーさせていただいた時は電話だったので、失礼がないかな、と…。
松本茜:いえいえ。あれ、何事?って(笑)
横田誓哉:電話ってなかなか無いですよね(笑)
茜さんとは、共演としては久しぶりでは無いですが、僕が主催するイベントに来ていただくというのは初めてなので、結構緊張しています。
松本茜:え!?本当ですか(笑)
横田誓哉:結構しています。毎回緊張しているのに、今回は輪をかけて緊張しているっていう感じですね。
松本茜:でも全然そんな風に見えないですよね。
横田誓哉:そんなことないですよ。もうガチガチです。今まで何回くらい共演したことがあるんでしょう。絶対共演の地は米子ですよね。5、6回ですかね。
松本茜:そうだね。レインボージャズオーケストラさんの定期演奏会だったり。
二人の出会い
横田誓哉:それこそレインボージャズオーケストラだと、僕が中学生で、茜さんが高校生の時に公民館で一緒に演奏をしたこともありました。
付き合いは結構長いですよね。僕が初めて茜さんを見に行った時が中学生で、高校生の茜さんのソロピアノのライブを見てめちゃくちゃ上手くて。トリオでも演奏されていたかな。上手いなんて言葉では失礼なくらい、こんな方が米子にいたのだというのを、僕に限らず皆が思っていました。中学生からライブはやられていたのですか。
松本茜:高校生からかな。高校生になった時に『いまづ屋』さんというお店で、当時鳥大の医学部のジャズ研の方たちと一緒にセッションしていた時期に、色々なところで演奏したいと思い、その頃から演奏活動を少しずつやっていたかな。
横田誓哉:すごいですね。ソロピアノもやっていたということですか。
松本茜:ジャズを聴き始めて、こういうのがジャズかなと思って弾いていたのが小学生の頃からだったので、高校に上がるまでは一人でしか弾けなかったです。アンサンブルが全くできなくて。
横田誓哉:どっちが凄いかって、どちらも凄いんですけど。
松本茜:だからそれまではずっと一人でやっていたんです。
横田誓哉:僕も小学生の頃から大人に混じってライブを毎週のようにやっていたのですけど、僕はビックバンドジャズはやっていても、コンボジャズとかはやっていなかったので、全然分からない世界で。そんな中で茜さんを観に行きました。多分コンボジャズを知った方が良いということで茜さんの演奏を勧められて行ったと思うんですよ。その時の演奏は未だに覚えています。それから少し経って何度か一緒にイベントで共演させてもらうこともありますが、そこがスタートだからこそ緊張するのかもしれないですね。
松本茜:多分そうですね。
横田誓哉:やはり高校の先輩にも当たるし、米子のミュージシャンの先輩として尊敬しています。
今回、わっしょい米子祭りというのは、米子の音楽文化を元気にするということと、もっとコンサートに気軽に来てほしいという思いから始まり、第1回、第2回とすごく順調に開催できました。少しは効果があったという実感が自分の中にありまして、これからもっと良いコンサートにしたいという中で、コロナが来てしまって。
米子の音楽文化を元気にするということと、コンサートにもっと行きやすくということは、気楽な気持ちでこうなったらいいなと目標立てたのに、本当にそれが音楽界で一番大事なことになったじゃないですか。ですので、第3回とそしてこの第4回も、もっとそれを良くしたいということで、茜さんに来ていただくことになりました。
音楽を始めたころの気持ち
横田誓哉:今回は中学生の吹奏楽部との共演もあります。生徒さんとの共演って今までありますか。
松本茜:今まではないですね。
横田誓哉:目前に控え、いかがでしょうか。
松本茜:楽しみですね。やっぱり一緒に音楽はしたいという気持ちはあっても、なかなかその機会を作るのが難しかったです。多い形として、私が弾いて聞いてもらうという形は結構あるのですが、一緒に何か一つのものを作るというのは今回初めてなので、その点はかなり楽しみにしています。
横田誓哉:僕は生徒さんと全国で演奏する機会が多くて、そこで毎回思うことがあります。茜さんは自分が楽器を始めた時やライブを始めた時の映像って、見ることありますか。
松本茜:見ますね。
横田誓哉:僕も見ることはあるんです。正直完全に拙いのですけど、楽器に対する思いだったり、楽器との向き合い方だったり、音を出すときの自分の気持ちの熱っていうのが、あの時の方があったんじゃないかと思うんですよ。
あの時って音を出すのも必死で、人前で音を出すことも怖くて、でも出すぞ、と演奏して。技術やグルーブ、ステージの見せ方は上がっていっても、その熱が段々薄れていくことはしょうがないことだとは思います。そんな中で、生徒さんと共演するとそれをすごく感じるんです。そこを茜さんがどういう風に感じられるのかというのも楽しみです。あの時の熱って戻らないものなんですかね。
松本茜:今誓哉君の話を聞いていて、私がジャズと出会った時の気持ちって鮮明に覚えていて、生演奏を目の前で聞いた衝撃ってすごく覚えているんですよね。もちろんCDとかも聞いたけれど、それでもこの音楽いいな、よく分からないけどわくわくするなって思ったのはやっぱり生演奏でした。
何をやっているか分からないけれど、その謎を一つでも知りたいというエネルギーは、昔はすごく大きかったんだと思いますね。例えば誰かと一緒に演奏するにしても、自分で調べて研究してやっていくにしても、若いうちって凄く吸収力もあるし、色んな影響も受けやすい時期だと思います。そういう世代の生徒さんたちが、一緒にやることで、何か音楽っていいなとか、今日すごく楽しかったなという気持ちになってくれたら嬉しいですね。
横田誓哉:そうですね。音楽文化を元気にするっていうのは、必ずしも音楽を続けなくてもいいと思うんですよ。ただあの時楽しかったと感じたり、思い出が一つ増えたり、また音楽を聞きに行きたいと、直接的でなくても間接的な原因になれば、コンサートに行くということももっと気楽になるかもしれないですし、音楽文化も盛り上がると思います。
見ることでの衝撃もすごかったですよね。だから僕は茜さんを見たときの衝撃は覚えています。もちろんプロミュージシャンも沢山観てきましたが、地元で茜さんのような方がいるということの衝撃がすごくありました。
松本茜さんのこれまで
ジャズとの出会い
横田誓哉:茜さんがどうやってピアノに触れ始めたかとか、誰に憧れたとか、そういう話ってそういえば聞いたことなかったですね。
松本茜:私はオスカー・ピーターソンというピアニストに一番影響を受けたという自覚があります。ジャズを聴き始めた頃に、周りの方々から当時MDに色々なピアニストの音源を入れてくれて、これを聴くといいよと渡してくださいました。ジャズって何が起こっているか分からないし、どういう歴史の音楽かも分からないし、知っている曲なんか全然ないし。
でもその音源を聴いている中で、なんかとにかくすごくワクワクするなと思ったのがオスカー・ピーターソンの演奏で。キャッチーで超絶技巧派なんですけど、これってすごく大事なことなんじゃないかと、今私がプレイヤーとなって思っています。
ジャズってよくうんちくとか、言ったもの勝ちみたいな風潮を受けがちなんですけど(笑)でもそのルールとかが分からなくても、何か分からないけど楽しいしワクワクするなっていうものがあれば、みんなと同じ音楽を共有できるはずです。
私はピーターソンに影響を受け、その気持ちを今でもずっと持っていて、今度はそういう思いを沢山の人に届けたいと思っています。
横田誓哉:なるほど。ピーターソンは昔からですよね。僕が茜さんを観に行った時も、組曲かメドレーを演奏していらしていました。
最初の楽器はピアノですか。
松本茜:ピアノですね。
横田誓哉:では最初からピアノで、クラシックを弾かれていたんですか。
松本茜:クラシックと呼べるのかというくらいのお稽古みたいな感じで。私結構劣等生だったのです。グループレッスンとかもあったけど、居残りして一人で指導してもらっていました。
横田誓哉:そうなんですか。今では僕の肌感ではジャズピアニストの中でも、失礼な言い方かもしれないですけど、指とかも結構回るタイプじゃないですか。違いますかね?
松本茜:いや、音数多い方だと思います。
横田誓哉:ですよね。だから今聞いてすごくびっくりしています。
松本茜:劣等生でしたね。やめようかと思っていた時に、たまたまジャズのコンサートに行って。
横田誓哉:ではジャズが無かったら続けていなかったかもしれないんですね。
松本茜:多分そうだと思います。
横田誓哉:ではそれまではクラシックで、ブルグミュラーとかやって?
松本茜:多分そこまでもいってなかったと思う。
横田誓哉:そうなんですね。では根っからのジャズっ子なんですね。
松本茜:ジャズっ子(笑)
横田誓哉:僕はニューオーリンズジャズだったり、ビッグバンドジャズはやっていましたけど、茜さんがやられているような、例えばビバップだったりは、未知の音楽です。ジャズやるでしょ、とお客さんやコンサートを企画される方に言っていただくのですが、意外とジャズも色々種類がありますよね。
松本茜:そうなんですよね。
楽器奏者として
横田誓哉:あの人はジャズだから呼ぶ、と言っても、あの人はスイング、あの人はビバップ、あの人はビッグバンド系、と結構色々ありますよね。ジャズって広い意味で言っているので。4ビートとかやらないジャズの人たちもいますし。
なかなか重なることが無い中、今回の共演となりました。でもいつもコンサートご一緒するときは楽しいですよね。音楽という枠ではリンクしているのだと思います。
松本茜:そうですね。一つのことを皆で力を合わせてやるというのは、やはりミュージシャンをやっていて一番魅力を感じるところです。生ものを、皆で頑張って作っていくところが楽しいですね。
横田誓哉:アドリブって、その場で思うっていう感じなんですか。
松本茜:特に何も考えていないんですよ。こうやって会話しているのも、誓哉君がこう言ったら私はこう言おうとか、考えて対話しているわけじゃないじゃないですか。それと同じで、人の演奏を聴いて、「そうだよね」って賛同する部分もあれば、「こっちはどう?」とやっている部分もあります。アンサンブルで、聴きながらやっているという部分が多いかもしれません。
横田誓哉:これをやろうと仕込んでくるわけではないんですね。自分の中で技術を身に着けて、逆にそればかりやってしまうんじゃないかという怖さがあったり、逆に避けてしまったり。
僕は演奏中、「今あの人がこういうメロディー、音量で、多分次はこう来るから、じゃあ僕はこっちの立ち位置でいようかな」と結構考えて演奏するタイプです。あまり自分のフレーズは気にしていなくて、特にBBBBはスネアで飾り付けなので、自分が上にいっちゃう場面が一番良くない場面だと思っています。
だからよく周りを観察して、音楽を作っています。大体会話も同じってことですかね。相手が何を考えているのかを察知して。特に茜さんはされていると思うんですけど。
松本茜:全体像を見るというのは、その中で自分がどうするかに関わり、あるのと無いのとでは全然違うと思います。自分が熱くなるのは良いけれど、どこかでクールな自分が俯瞰して見ている状態というか。すごく集中しているけど、すごくリラックスしている状態というか。そういう状態がベストじゃないかと思いますね。
横田誓哉:僕なんかが言うのはあれですけど、結構僕も近くて。どういう風に演奏したらいいですかと聞かれた時に、僕はあまりそういうの答えたくないんですけど、ネガティブな人間なんで。
松本茜:(笑)
横田誓哉:一番大事なことって、自分の耳がここじゃなくて、観客側にあるかどうかってことだと思うんです。俯瞰して演奏中も聴き取れるかということ。もちろんここでドラムを叩いていたら、自分のこの耳ではドラムが一番デカいじゃないですか。
でもこの耳ではなく、お客さんのところに耳を持っていって、バランスだったり、何を次にしてほしいかを察知したり。それができるミュージシャンは良いミュージシャンだと思います。自分ができるとかではなく、僕が好きなミュージシャンはそれをしている気がします。今の茜さんの話は俯瞰して見る自分ということで、リンクするお話だと思いました。
最後にメッセージ
松本茜:今回、1年ぶりの米子でのコンサートになります。私が尊敬しているドラマーの横田誓哉君が主催ということで、充実したコンサートになるのではないかと思います。私もとても大好きな地元の、大好きな方々に会えるのを楽しみにしています。ご来場お待ちしております。
横田誓哉:第4回わっしょい米子祭り、今回は本当に特別です。3組もゲストがいます。今回はコンサートというよりフェスに近い形になるんじゃないかと思っています。もちろん生徒さんの吹奏楽の演奏、共演もあります。そして、松本茜さんがついに登場されるということでとても楽しみにしております。ぜひ観に来てください!
よろしくおねがいします。
この記事の出演者
横田 誓哉(BLACK BOTTOM BRASS BAND)
1991.10.30生まれ 鳥取県米子市出身。
幼い頃から父の影響でドラムを始め、10歳で地元のバンドを掛け持ちしながらライブ出演を重ねる。
上京後、BLACK BOTTOM BRASS BANDにスネアドラマーとして参加。後に正式メンバー加入。
全国各地にてホール公演や海外のフェス出演の他、綾戸智恵氏など著名なミュージシャンとの共演を行なっている。
個人でもDEPAPEPE、平井堅、西野カナ、ゆず、Official髭男dism(順不同、敬称略)などのレコーディングやテレビ、ライブ出演、アレンジを行う。これまでに江川ゲンタ氏、東原力哉氏に師事。
2014年より米子市ふるさと大使を務める。
2018年から鳥取県米子市にて「わっしょい米子祭り」を実行委員会の代表として毎年企画、開催している。
松本 茜
鳥取県出身。2008年コロムビアレコードからメジャーデビュー。現在都内を中心に自身のピアノトリオで活動する他、浜崎航meets松本茜TRIO"BigCatch"、山田穣(as)、多
田誠司(as)、古野光昭(b)、佐藤達哉(ts)(敬称略)等、日本を代表するジャズプレイヤーのバンドで活躍。またNYにてNatReeves(b),JoeFarnsworth(ds),PeterWashington(b),GeneJackson(ds)らとアルバムを制作。3rdアルバム”MemoriesOfYou”がイタリアのウェブマガジン『JazzConvention』で紹介される。
パリで行われたJazzInJapanに中川英二郎(tb)カルテットで参加。ライブ活動の傍ら、キリン生茶、清水建設のCMなどでの演奏も担当。第1回倉吉天女音楽祭出場、グランプリ受賞。第23回浅草ジャズコンテスト・ソロプレーヤー部門金賞受賞。出光音楽賞ノミネート。
2018年より、とっとりふるさと大使を務める。